マンガでお客さまの心を動かした、ユーグレナ社のリテールメディア活用術
「マーケティング活動において、小売経済圏内で自社商品を知っていただきたいお客さまにリーチし、店頭への送客を目的としたアプリ広告として精度高く設計・実施できるリテールメディアは歩留まりがよく効率的だと思う」ーー株式会社ユーグレナ(以下ユーグレナ社)ドラッグストア向けブランドのブランドマネージャーであり、食品ブランド「からだにユーグレナ」の飲料企画担当である三重 啓次郎さんは、リテールメディアをこう評します。
メディア上の行動と購買行動が紐づくことで、情報の認知から店頭での購買まで、データの一貫性を持って購買に至るまでのプロセスを可視化できるリテールメディアというワードが小売業界で徐々に広まりつつある中、実際に活用の第一歩を踏み出したユーグレナ社。三重さんはその当初、リテールメディアに対してどのような所感を抱いたのでしょうか?
過去の経験則から選択した「マンガ施策」
ユーグレナ社は、藻の仲間である「石垣島ユーグレナ」の豊富な栄養素を毎日手軽に摂取できる食品ブランド「からだにユーグレナ」の飲料やサプリメントを主に自社サイトで通信販売してきました。小売店舗における店頭販売にも当然ながら魅力を感じていたものの「大きなブレイクスルーを得るには難しい状況だった」(三重さん)と言います。そこで三重さんは、小売企業とのシナジー効果が期待できるリテールメディアに、新しいマーケティングの可能性を見出したそうです。
三重さんは、一般的なWeb広告と同様に比較的安価にコンテンツの効果検証が容易であり、マス広告のように小売店舗との親和性を持つリテールメディアを「高い費用対効果が期待できると感じた」ことから、活用に至ったようです。あわせて、食品卸の日本アクセスの子会社であるD&Sソリューションズ(以下D&S)によるリテールメディアであれば「小売企業へのアプローチとして親和性の高さを感じた」とも話します。
ユーグレナ社はこれまで、通販サイト等で「石垣島ユーグレナ」の有用性について丁寧に説明することでお客さまを増やしてきました。その一方で、小売企業の店頭でユーグレナ社や「石垣島ユーグレナ」を知らないお客さまに「からだにユーグレナ」を手に取ってもらうには、わずかな接触時間で「認知」から「理解」まで購買フェーズを進め、「購入」してもらう必要があり、通販と比べてハードルがかなり高くなります。そこで「店頭での認知や理解が進むような最適なメッセージの模索と、小売店舗さんと同じ目線で売り場作りを把握することが、ユーグレナ社にとっての最初の(リテールメディア活用の)目的だった」と三重さんは話します。
ユーグレナ社が「石垣島ユーグレナ」や商品への「理解」を得るための施策として選んだのは「マンガでのコンテンツ展開」でした。ユーグレナ社はこれまでもマンガを用いたチラシや新聞などのオフライン広告で成果を出しており、「D&Sさんから提案をいただいて、マンガでのコンテンツに決めた。ストーリーもわかりやすく、これまでの経験則としてお客さまの理解促進に大きく寄与できるのではないかと思った」と振り返ります。
従来のデータとは異なる知見が得られた成果
では、実際にどのような成果が得られたのでしょうか?リテールメディアの成果の一つとして、マンガを読んだ方に実施するアンケート回答内容が挙げられます。「からだにユーグレナ」は、含有されている「石垣島ユーグレナ」の栄養素の豊富さに注目が集まっていますが、取得したアンケートの回答では栄養に関すること以上に「気軽に睡眠改善」という回答率が高かったそうです。
「私たちは、『石垣島ユーグレナ』の豊富な栄養素という点が最も好まれる要素と考えていましたが、思いのほかお客さまは『睡眠を改善したい』方が多いという知見が得られた」
「からだにユーグレナ」のお客様は、野菜や栄養不足を補うために青汁やスムージー、野菜ジュースのかわりに「石垣島ユーグレナ」の豊富な栄養素を求める、いわゆる「グリーンチャージ」を目的とした方が多いそうです。しかし、リテールメディアでのアンケート回答結果では「栄養補給」よりも「睡眠改善」に関心があるお客さまの割合が高く、「これまで実施してきた多面的な訴求展開よりも、『石垣島ユーグレナ』の最大の強みとして、お客さまが強く求める『栄養補給』『睡眠の質改善』の2つに訴求軸を絞る方が良いのではないか」(三重さん)という仮説も生まれたそうです。
「小売企業のバイヤーさんは、お客さまが求めるカテゴリを作り、盛り上げていく使命をお持ちだと考えている。今回のアンケート回答データは、仮説として『睡眠課題を持つお客さまが多いよ』という提起もでき、睡眠改善に対する商品が複数ある中で『今日は味を変えてみよう』というように、お客さまに手に取ってもらえる可能性が高くなる」(三重さん)
実際に、このアンケート結果などを用いて東海地方の小売企業に営業したところ、他の睡眠改善商品とユーグレナ社の商品を平台に並べて陳列してもらった事例も作れたそうです。
「取組み状況からマンガコンテンツを掲載した小売企業が多くなかったこともあり、望んだ成果を100%得られた訳ではないが、しっかり商品価値の訴求が出来れば、期待した反応が得られることを経験値として蓄積出来たことが大事だと思っている。ベンチマークしている他社の商品が100円程度の価格帯であるのに対して、我々の商品は高価格帯。それにも関わらず、マンガで商品価値を伝えたことで商品が動いた。リテールメディアのポテンシャルの高さだと思う」
商品開発への応用もあり得る?
今回得られたアンケート回答データは、営業活動での活用だけではなく、商品開発などにも活かせると話します。例えばパッケージデザインでは、ストレス緩和や睡眠改善に対する訴求を記載していますが、ニーズの高さによって、睡眠改善に対する訴求に絞るといったことが考えられる。さらには「商品開発において、現行商品を睡眠改善に特化した機能性食品として再開発することで、販売価格を抑えた新たな商品が開発できるかもしれない」とのことです。
「通販サイトでの顧客基盤があるので、お客さまの声は定期的にデプス調査をしている。ただ、小売店舗など流通向け商品については、大手食品メーカーにアドバイザーとして入っていただき、商品の嗜好性など、一般ユーザーの調査を実施している。通販と小売(流通)での販売に対するものづくりは異なると理解していたが、改めてお客さまの求めるものの違いに接し、小売(流通)向けの商品は『育てていく覚悟が必要』だと感じた。スーパーは生活インフラとして定着しており、ドラッグストアも生鮮食品がワンストップで買える時代。生活者にユーグレナ社の商品を知ってもらうためにも、流通チャネルは非常に重要で、チャレンジしていかなければならない場所だと思っている」
こうした商品開発にも言及したあとに三重さんが語ったのが、冒頭の「マーケティング活動において、小売経済圏内で自社商品を知っていただきたいお客さまにリーチし、店頭への送客を目的としたアプリ広告として精度高く設計・実施できるリテールメディアは歩留まりがよく効率的だと思う」という言葉でした。
リテールメディアは、単なる広告手段ではなく、マーケティング活動の一部としても活用できる。新たな価値の一端に触れた手応えを得たように感じました。
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