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コンセプトは「愛を伝える」、その手段は「共感の構築」——D&S ソリューションズのリテールメディアコンテンツができるまで

こんにちは、D&Sソリューションズ(以下D&S)でメディア事業の責任者をしている位田(いんでん)です。

「小売の未来を一緒に考える」をテーマに、リテールメディアに関わる取り組みを小売・食品業界のキーマンの方々とともに考えるコミュニティメディア「みんなのリテールDX」。これまでさまざまなキーマンを取り上げてきましたが、今回は趣向を変えて、メディアの運営元であるD&Sの取り組みをご紹介したいと思います。

D&Sでは、小売企業のみなさまがリテールメディアを提供するためのSaaS事業を展開しています。そこには社内の編集部が作るオリジナルコンテンツ、そしてメーカー様の商品などを紹介する広告コンテンツが共存しています。そこで大事にしているコンセプトは「(メーカーが持つ、商品への)愛を伝える」ということ。そして、そのための手段は「(お客様との)共感の構築」です。私たちのコンテンツが生み出したリテールメディアの成功事例、そしてコンテンツ作りに込めた想いについてお話させていただきます。

位田 哲也
D&Sソリューションズ株式会社
ビジネス開発ユニットメディアグループ長
印刷会社、イベント会社、企画会社を経て、株式会社博報堂プロダクツにてプランナーとして飲料メーカー様、食品メーカー様・自動車メーカー様など多くの業界のプランニングに携わる。2015年よりD&Sソリューションズのメディア事業の責任者としてメーカー様のお役に立つべく邁進中。


リテールメディアはリテール“アド”ではない

そもそも「リテールメディア」という考え方自体が、最近になって提唱されはじめたものです。そこでまず、あらためて私たちの考える「リテールメディア」の定義からお話させてください。

これまで小売企業のみなさまが取り扱ってきたメディアと言えば、オウンドメディアやサイネージ、POPなどがありました。屋外広告なども含まれると考えていいでしょう。その中でも小売企業様の持つデータを活用し、それを分析して、次の施策に活用できる——つまりPDCAサイクルを回せるメディアこそがリテールメディアだと考えています。

私が少し気にしているのは、「リテールメディア」を“メディア”ではなく“アド(広告)”、つまり「リテールアド」と多くの方に捉えられがちであることです。米国でのリテールメディアの代表的な成功事例としてWalmartやAmazon.comの事例があり、小売企業様の広告ビジネスが本来の小売ビジネスの規模に近づいているという話を聞くと、リテールメディアと言っても、広告中心で考えてしまうのかもしれません。

ですがテレビや新聞といったメディアに広告だけしかなかったら、お客様はそのメディアを見てくれませんよね。独自のコンテンツがあるからこそ、お客様がそのメディアを見てくださって、そこから広告やビジネスにつながっていくわけです。それと同じように、リテールメディアを広告ありきで考えると失敗してしまいます。

デジタルサイネージで放映する内容にもまだまだ工夫の余地があると思っています。今、サイネージでは、レシピ動画のようなコンテンツを流したり、テレビCMをそのまま流したりすることも少なくありません。その結果と言うべきか、業界では「サイネージは見られて1秒程度」とも言われています。

それがもし「お店のサイネージでいつも面白いコンテンツを見られる。しかもそれが毎週更新されている」といったことになれば、サイネージを見るきっかけは今まで以上に作ることができますよね。もちろん(店舗内の流動性の観点などで)お客様を立ち止まらせることがいいかどうかという話はありますが、少なくともサイネージをメディアと呼ぶ以上は、そういった”面白い”コンテンツも必要だと思います。

オーガニックコンテンツの延長線上にこそ、広告コンテンツがある

D&Sでは、小売企業様に特化したVertical SaaS「RETAILSTUDIO」を提供しています。これを導入すれば、小売企業様が初期費用をかけることなくリテールメディアを運営できます。運営するスーパーマーケットのお客様向けにLINEミニアプリなどを通じてリテールメディアを展開できるというもので、そこにさまざまなコンテンツなどを配信しています。

私たちがリテールメディア向けに作るコンテンツは大きく2種類あります。1つはオウンドメディア向けのオーガニック(独自)のコンテンツ。そしてもう1つは、メーカー様の商品の広告コンテンツです。

前者はスーパーマーケットのお客様向けに提供するオウンドメディアのコンテンツです。中心となる読者は40代から60代の女性なので、そういった方々に受け入れられるようなトンマナ(トーン&マナー)や、内容を意識しています。

コンテンツの一例を挙げると、季節に合わせた風物詩やイベントに関わる内容などは定番です。ハロウィンやバレンタインなどに合わせた食材やレシピなどの内容は多くのお客様が読んでくれます。また、「キャベツまるごと使い切り」や「ナスの七変化」、「フライパン1つでできる料理」といったような、料理雑誌の王道的なテーマも人気です。記事を読んで「じゃあ今日はキャベツを買ってこよう」、「この食材とあの食材だけ買えば今夜は大丈夫」となると、あとはもうスーパーに行けばいいだけですよね。そういった日々の料理の選択を助けるコンテンツも好評です。

用意するのは3つだけ! あさり・新玉ねぎ・お米

冒頭にお伝えしたように、そういった読者属性やトンマナを考慮したコンテンツの延長線上に、メーカー様の広告コンテンツがあります。

メーカー様の広告コンテンツの作り方についてもお伝えします。メーカー様の商品は、商品開発部門をはじめとした社内の多くの方々が強い「愛」を持って商品化しています。「愛」を持ってこだわり抜いた特徴があって、「これなら売れるだろう」と思って作られています。

ですが、 意外とスーパーマーケットの中だと、その愛や想いが伝わらないことがあります。スーパーマーケットという物理的に制限のあるリアルスペースでは、メッセージを伝えられる場所も限られていて。結局は商品名や商品パッケージ、価格しか店頭では伝えることができません。

そんな商品への愛をしっかり伝えることができれば、お客様は商品を知って、理解して買ってくれます。さらにはファンにもなってくれる。リテールメディアでは、そういった商品への愛をしっかり伝えるというのが、私たちの根本的な考え方ですね。

メーカー様から商品のお話を聞く際に大事にしていることがあります。それは、「とにかく全部聞く」ということです。メーカー様は、お客様に伝えたいことがたくさんあります。まずはとにかく取材で全部お伺いします。

その上で、私たちから企画を提案して、コンテンツの内容を詰めていきます。メーカー様は「この商品は●●だからいいんだ!」と、とにかく作り手としての思いを伝えたいものです。ですが、そういった意見をそのまま出すのであれば、私たちは必要ありません。コンテンツの作り手が実際にその商品を使った上での感想を伝えるなど、「使ってみたい」「自分と同じような人がこう使っている」といったところで、読んだ方との“共感”を生み出せるかが重要になります。

そんな共感をどうやって生み出すのか? みんなのリテールDXでご活用いただいたメーカー様も語っていましたが、1つのアプローチとして「マンガ」があります。依頼したマンガ家さんに、実際にその商品をお送りし、使ってもらった上でマンガを作ってもらっています。なお、マンガ家さんも、スーパーマーケットのメインターゲットと同じく、40代から50代の女性をキャスティングしています。そういったことの1つ1つが大事だと思っています。

リテールメディアで“価値”を訴求

最近は様々な商品の価格高騰が続いており、お客様の価格に対する意識は非常に強くなってきています。その中で価格だけで勝負していくことは非常に困難になってきていると思います。だからこそ価格だけではない価値をきちんと伝えていくことが重要だと考えています。

また、リテールメディアで訴求できるのは、新商品ばかりではありません。例えば日清オイリオ様の「マヨドレ」という商品があります。これは卵不使用のマヨネーズタイプドレッシングで、大概のスーパーマーケットには置いてあるのですが、「知っている人だけがよく知っている」という類いの商品でした。それをマンガコンテンツを通じてお客様に価値訴求した結果、コンテンツ非閲覧者と比較して、閲覧者の購買率が15倍にもなりました。

日清オイリオ様の「マヨドレ」事例

ほかにも、雪印メグミルク様の「MBPドリンク」も分かりやすい事例です。これは「骨密度を高める」という機能性表示食品で、メーカー様としては、当初70〜 80 代がメインの購買層だと想定していました。しかし、全世代に向けて広告コンテンツを配信したところ、50 代の購買率が高かったのです。50代といえばそろそろ骨密度について意識する世代。コンテンツを担当したマンガ家さんも 50 代の方だったので、「自分ごと」にできたお客さんがいたということだと思っています。

雪印メグミルク様の「MBPドリンク」事例

増えるメーカー様からのニーズ

メーカー様からのニーズは増えつつあります。「商品の課題」とひと言で言っても、その内容はメーカー様や商品ごとに千差万別です。例えば、「トライアルを取れない」、「リピートが少ない」、「商品理解が追いついていない」などなど……。

誤解を恐れずに言うと、今までの営業活動は経験と勘で進めていたところもあると思っています。メーカー様の営業が「今回この商品のテレビCMを放映します。だから、商品を置いてください」という感じですね。

商品が配荷されたとしても、その商品がどんなお客様に、どんなふうに買われたのかなどはよく分かっていませんでした。

メーカー様は小売企業様をお客様との間で挟むから、お客様を知る機会があまりなかったんです。ですが、リテールメディアにおいては、小売企業様のデータを分析できます。そのためメーカー様へその分析結果を元にフィードバックができるようになりました。その結果、そのデータをメーカー様が小売企業様への営業活動、提案に活用する、という、いい循環ができると思います。これはとても重要なことだと思っています。

もう少しデータの話をすると、「コンテンツを見て商品を買った人」も分かるのですが、それ以上に「コンテンツは見たけれども、商品を買わなかった人」まで分かります。言ってみれば「“未”顧客」なわけですが、そんな方々の声を分析すれば、買ってない人にはなにがハードルなのか、競合商品とはなにが違うのかなども分析できるようになります。先ほどお話しした雪印メグミルク様の事例などは、まさにそうやって新しいニーズが顕在化したものでした。

ID-POSなどの定量データとアンケートの定性データを活用して今まで見えなかったお客様を知ることで、お客様に寄り添った商品展開、プロモーション展開ができると考えます。

また、リテールメディアを活用して商品の価値を伝えることで、お客様は納得して商品を値引きなしで買っていただけるようになります。そうすると、小売企業様、メーカー様の利益につながり、全員がwin-winになると考えます。
リテールメディアは始まったばかりですが、小売企業様、メーカー様、食品卸様がうまく活用すべきメディアです。ぜひ、一緒にリテールメディアを活用し、みんながwin-winとなる世界をつくっていければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!
引き続き、みんなのリテールDXをチェックしていただけると嬉しいです。
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この記事を書いたのは・・・
位田 哲也
D&Sソリューションズ株式会社 ビジネス開発ユニットメディアグループ長
株式会社博報堂プロダクツにてプランナーとして多くの業界のプランニングに携わった後、2015年よりD&Sソリューションズのメディア事業の責任者としてメーカー様のお役に立つべく邁進中。

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